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行動するもなかなか身につかない人の備忘録

彼女いる?

「彼女いる?」というたった5文字の何気ない質問が本当に怖かった。どうかその質問はされませんようにと願っていたし、一人の時に返事を何度も練習していたくらいだ。大抵は「いないんだよね、ハハ」と、作り笑いをうかべ答えていた。もっと怖いのは、その後に続く「どれくらい(彼女いない歴)?」という質問だ。冷や汗をかき、苦笑いで「ずっと」とかなんとか答える。「・・3年くらいかな~」と嘘をついたりしたこともある。そして手元にある水を何度も口に運んだ。さっきまで楽しかった会話が、途端に楽しくなくなり、早く終わらせたいという思いに駆られる。

 

 20代後半にさしかかっても彼女の一人もいたことがないことが、誰にも知られたくない人生でいちばん恥ずかしいことだった。そのことで面と向かってからかわれたことは一度もなかったが、なぜか周りにばかにされている気がしてならなかった。さらにいえば私の人生がうまくいっていない気がするのも、彼女がいないせいにしていた。そんな考え方こそ恥ずかしいのだろうが、本気でそう信じていた。彼女さえできれば迷いが減り、人生が好転しだすと。

 

 当然そんな考え方の私に彼女ができるわけなどなかった。そのくせ「彼女いる?」と現実に向き合う機会を、せっかく与えられても、そこからできるだけ早く逃げていた。いつも自分の部屋に帰ると、君に届けとらドラ、君に読む物語・・などの恋愛漫画や映画の登場人物に自分をあてはめ、物語の世界に酔いしれた。そして彼女が無性に欲しくなると、美容院や駅ビルに行っては女子受けの良さそうな格好とは?と悩み、デートの約束も無いのにどこのレストランに行こうか迷っていた。そんな日々をずっと繰り返していた。

 

 

 そんな状況にある私を変えたきっかけは、奇しくも「彼女いる?」という質問から始まる会話であった。この時も、いつものように「いない」「ずっと」と会話を続けた。

 

 

 余談だが、恋愛話から逃げる私ではあるが、昔からコソコソと彼女を作ろうとはしていた。例えば、未だに誰にも打ち明けていないが、大学時代はサークルのかわいい後輩と二人きりででかけて、初めてのデートでいきなり告白したりしていた。この後バイトに行くという後輩を引き止め、公園のベンチで携帯のメモ帳に書いた告白文を読んだ。後日、丁重に手紙でふられた。

 

 話を戻す。「ずっと。」と答えたあと、いつもなら早々に会話から逃げ出そうとするのだが、この日は違った。逃げずに現実と向き合わなければ。私は今まで隠していた恥ずかしくて、かっこわるい自分をさらけだすことに決めたのだ。普段は恋愛に興味ないような澄ました顔をしているが、彼女が欲しくてたまらないこと。そのために街コンに行き、マッチングアプリを使っていること。けれど全然うまくいっていないこと。いつも以上の冷や汗で一生懸命に話した。

 

 相手は茶化しながらも真剣に話を聞いて、うまくいくようにとアドバイスまで返してくれた。それは私の欠点を鋭くついた、私個人へ向けられた活きたアドバイスだった。いくらググっても、恋愛ドラマを何十本観ても、決して得られないような、貴重なものだった。それからは「彼女いる?」という言葉に立ち向かっていくようにした。時には自分から切り出して、これまで恥ずかしくてできなかった、自分の話を話すようになった。普通なら相談を受ける関係であろう後輩にまでだ。

 

 そして、たくさんの人の言葉に支えられて、平成も終わる頃。何回目かのデートの帰り道に、彼女の手をぎゅっとにぎり好きであることを伝えた。彼女もぎゅっと手を握り返してくれた。ついに好きになった人が私を好きになってくれたのだった。もがいて失敗する姿は、かっこわるくて、恥ずかしいことだと思っていたけれどそうではなかった。むしろそんな自分を隠さず、周りにさらけ出せることはかっこいいことなのだ。そうすると決断できたことが今につながっていると私は考えている。そしてこれは恋愛に限らず、達成が困難な新しい物事に挑戦する時に、忘れてはいけない考え方だと今は思う。

 

 またまた余談だが、彼女ができても迷う場面は当然なくならない。ただ「次の週末どこにいこうか:)?」なんて楽しい迷いも加わった日々はとても幸せだ。